二重切開法とは言葉の通り切って二重の構造を作る手術です。二重の構造とは瞼の前葉と後葉の間のつながり、すなわち二重ラインと目を持ち上げる筋肉(上眼瞼挙筋)の間の連結を意味し、二重手術とは筋肉が収縮して目が開く際に二重ラインを引き込むことができるようにする手術です。二重切開法は切開し前葉(皮膚・眼輪筋)と後葉(挙筋腱膜)もしくは中葉(眼窩隔膜、瞼板前組織)との間を縫合し癒着させることで永久的な連結を形成します。一方二重埋没法は糸でこれらの連結を作ります。
二重埋没法と切開法はどのように使い分ければよいのでしょうか。まず二重埋没法は制限の大きい手術です。埋没法は皮膚割線(皮膚のシワの向き)に沿うラインしか作れません。そして瞼の厚い方や目の開く強さ(開瞼力)の弱い方には適しておりません。
二重幅は重りのようなものです。二重幅を広げる程、重りの重さが重くなり、そのラインを食い込ませる開瞼力の強さが必要です。二重幅の広さ(重りの重さ)に対し開瞼力(重りを持ち上げる強さ)が足りないと二重が食い込まない(重りを持ち上げることができない)あるいは一時的に食い込んだとしてもすぐに取れてしまいます。これは埋没法においても、切開法においても同様です。二重になるためには①二重の構造(前葉と後葉の連結)と②二重を食い込ませるのに十分な開瞼の両方が必要であるため①だけでは二重になりません。
このうち①の条件を満たすためには埋没法でも切開法でも可能ですが瞼があまりにも厚い場合は埋没法では難しい場合があります。②は患者様自身が元々持つ能力であり、埋没法でもシンプルな二重全切開(切って二重の構造を作る手術)でも変えることができません。②を向上させる手術は眼瞼下垂手術しかありません。
眼瞼下垂手術は保険診療でも行われる手術であり眼瞼下垂(目の開きが弱く瞼が下がって視界が悪くなったり、目を強く開けようと目周りの筋肉に力が入って頭痛や肩こりなどの症状が生じる状態)という病的状態を治すために行われますが、美容外科(自由診療)で行う眼瞼は目的が異なることに注意が必要です。美容外科で行う眼瞼下垂手術はなりたい二重幅になるのに十分な開瞼力をつけるため、あるいは開瞼は十分であるもののさらに黒目の露出を増やすため(目を大きくみせるため)に行います。すなわち眼瞼下垂の状態でない患者様にも眼瞼下垂手術を頻繁に行い、特に幅広二重を切開法で作る場合にはほぼ必須となる非常に頻度の高い手術となります。
眼瞼下垂手術にも二重手術と同様埋没法と切開法がありますが、埋没法は調整が難しく後戻りもあるため原則切開法が推奨されます。この眼瞼下垂手術切開法を行って二重を作るのに十分な開瞼を得ることが二重を切開法で作る最大のメリットとなりこの手術を行うために二重切開法があると言っても過言ではありません。眼瞼下垂手術を行わないシンプルな二重全切開は埋没法とあまり変らないため適応選択に注意が必要です(ナチュラル二重切開の項目を参照。)
二重整形は初めてだからまずは埋没法、3回やって取れたら全切開というのはある意味正しくてある意味間違いです。二重埋没法は適正な幅を選んで、取れにくい方法で行えばそう簡単には取れることがありません。埋没法が1回取れる時点で埋没法に向いていない可能性が高いです。その原因の分析ができていなければ何回やっても同じ結果となります。目の開きが悪い方に埋没法は禁忌です。二重が取れるどころかさらに開きを落として頭痛を誘発したり日常生活に影響を及ぼす可能性があるからです。埋没法か切開法かの選択は前述の通り①希望幅(重りの重さ)と②開瞼力(重りを持ち上げる強さ)で決まります。余程瞼が厚い場合を除いて、①と②が釣り合っている場合は二重埋没法で十分、①に対して②が足りない場合は埋没法もシンプルな全切開も適応はなく全切開+眼瞼下垂手術が必要です。二重整形を希望される場合、①に対する②が足りていない場合がほとんどです。すなわち二重整形の第一選択治療は埋没法ではなく全切開+眼瞼下垂修正とも言えるかもしれません。