タレ目切開とは

タレ目形成、涙袋形成といった手術は教科書や論文が少なく術式が明確に確立されていない手術です。従って、各クリニックや各ドクター毎に手術方法が統一されておらず、執刀医のセンスが問われる手術です。

そしてこれらの手術方法は従来多く行われてきた術式にデメリットが多いにも関わらず約半数のクリニックは未だにその方法を採用しております。

グラマラスライン(タレ目手術)には①皮膚側を切る方法、②結膜側を切る方法、③皮膚と結膜両方を切る方法があります。どのアプローチがよい、間違っているなどはなく症例や希望変化に応じて決めていきます。

ただ前提として変化量が同じであるなら皮膚を切らないに越したことはありません。皮膚を切ると傷ができてしまう、涙袋が減ってしまうといったデメリットがあるからです。そして結膜切開のみで大きな変化を出すことは可能です。

タレ目切開において、皮膚切開と結膜切開どちらが大きな変化を出せるか、どちらが後戻りするかという議論は無駄です。論点がずれているからです。皮膚切開か結膜切開かではなくどのような機序で変化を出しているか重要なのはこれだけです。

タレ目にする原理は大きく分けて3つです。①皮膚切除、②腱膜や隔膜の短縮、③タッキング(組織を縫い合わせること)です。このうち最も後戻りしないのは②、ほぼ後戻りするのは③、後戻りする上デメリットが多いのが①です。すなわちタレ目にする原理は②以外用いてはいけません。

それにも関わらず従来のタレ目手術は①+③の原理で行われています。下瞼の皮膚を切除し(①)、筋肉を切開し瞼板と隔膜または隔膜と骨膜を縫い合わせる(③)。直後は大きな変化が出るのですが必ず後戻りします。皮膚を取るだけで下瞼の位置は下がりますが、それはハムラ法で外反(アッカンベー)になっているのと同じ原理です。下瞼の粘膜が見えますし最悪の状態です。また瞼板と隔膜、隔膜と骨膜などどこを縫合したところで、物理的な長さが短縮されていないとそれは原理として埋没法と一緒です。グラマラスライン切開法という名前にも関わらずタレ目にしている機序がグラマラスライン埋没法と変わらないんです、だから後戻りするんです。従来の方式は皮膚を切って埋没法しているのと一緒で、二重手術に例えるなら二重全切開という名目で皮膚だけ切り取って、二重は埋没法で作っているのと一緒です。約半数のクリニックは未だにそのような術式を導入しているため、グラマラスラインの長期経過でいい症例を作ることができません。

では半永久的にタレ目にするためにはどうすればよいのか。それは②腱膜または隔膜の物理的な短縮です。前者は眼瞼下垂手術、後者はハムラ法の原理の応用です。言い換えるとグラマラスラインは眼瞼下垂+ハムラです。なのでこの2つの手術を日常的に行っている医師でなければ結果を残すことができない難しい手術です。グラマラスラインをご検討されている方は執刀医が眼瞼下垂、ハムラをどれだけ綺麗にできているかよく確認したほうが良いです。眼瞼下垂、ハムラが得意でない医師にグラマラスラインは行えません。

ちなみに腱膜短縮も隔膜短縮も皮膚側からも結膜側からもどちらでも行えるため、タレ目の変化を出すのに皮膚側か結膜側かの議論は意味がないです。この2つの機序で行ったグラマラスラインは後戻りがほぼありません。どちらの原理を採用してもよいのですが、両方を採用して大きく下げる方法が私が開発したグラマラスラインダブルロック法です。ただしグラマラスラインで大きな変化を出すと皮膚や筋肉が余るため皮膚切開で余剰組織を減らす必要があります、だから大きな変化を出す場合皮膚切開が必要となります。

鶏が先か、卵が先か。皮膚切開だから大きな変化が出せるは正しいですが、皮膚を切ることによって大きな変化を出しているのであれば大きな過ちです。大きな変化を出した結果、余った皮膚を切らないといけない、皮膚切開はあくまでも結果として必要となるものです。

グラマラスラインはその歴史に大きな欠陥があります。教科書が不十分なので、教科書通り、マニュアル通りの動きしかできない医師には到底使いこなせません。私は後輩の技術指導を担当することが多いですが、その際よく言わせてもらう言葉として、教科書を読まない人間は3流、教科書に書いてあることしかできない人間は2流、そしてこのどちらもグラマラスラインは上手にできません。教科書を一通り読んだ上で教科書を応用し教科書に書いていないことができる、そんな一流の外科医しかこの手術は使いこなせません。